2011年10月16日から、このブログを書き始めました。 サマゴーンは、ラムカムヘン通りの北、ソイ110に位置する、 バンコクでも歴史が長い有名大住宅街(と言われているよう)です。 戸数、5000の、キング・プロジェクトで開発された、かなり大きなムー・バーンです。 ロングステイを一歩踏み込んだ生活となりましたので、 都心から離れ、しかし、まったくの田舎暮らしでもない、こういうところもいいのか、 と思って住み始めました。 さて、どんな生活になることでしょうか。

2014/11/28

高倉健さん、最後の映画「あなたへ」、大感想文




高倉健さんの、最後の映画「あなたへ」を見ていなかったので、

ネットで探して、ようやく見つかったので、早速鑑賞しました。





この映画は、2012年作ですが、

それ以前の作品としては、1999年「ぽっぽや」、2001年「ホタル」、

2005年「単騎、千里を走る」とあり、

実に6年ぶりの主演作品でした。

ごく最近も、新作のプランがあったと聞きましたが、

結局は「あなたへ」が最後の作品となり、

そして、内容も、最後の作品にふさわしかった気がします。


そもそものシナリオ原作は、「夜叉」や「あ・うん」の企画や制作者だった

故市古聖智さんが(この方も面白い人です)、

「健さん映画」として残しておいたシノプシスだそうです。


6年振り、というのは、健さんにとって最長のブランクで、

いろいろな企画を断り続けているうち、

もう映画が撮れなくなるかもしれない、という思い、

これが最後の映画になるかもしれない、

という思いもあっての80歳での出演だったのでしゃないでしょうか。


「長年一緒に仕事をしてきた降旗康男監督と、もう一本やっておきたくて。

監督も僕も、人生の大事なことに気がついた、というか」

という言葉を残しています。



主人公は、仕事が刑務官、

木工作業官という資格をとって、

定年退職のあと、嘱託として再雇用され、

所内の作業監督を続けている、という設定。


網走刑務所に服役する仁義に堅い博徒、

という役柄で活躍して、

「幸福の黄色いハンカチ」でも服役者ですが、

ぽっぽやなどを経て、

最後に刑務官、

最後の役柄として、腑に落ちる気がします。


映画の冒頭に、

妻(田中裕子さん)と二人だけの部屋で、

風鈴の音を愛でているシーンがでてきます。

「いい音!」と、風鈴の音に感激する夫。
「でも、秋になったら忘れずにはずさなきゃね。
季節外れの風鈴ほど、悲しい音はないもの」と妻。

2度、3度と、この回想シーンが登場するので、

ここにキー・メッセージのひとつが込められているのがわかります。

とにかく、このシーンの健さんの声が、他のシーンとはちがって、

何とも言えない味があって、すごく、良いのです。

「どんなに美しく、愛おしいものでも、

永遠という時間はない、

やがて時が来たなら、静に去っていかねばならない」


物語は、妻を急性リンパ腫で亡くした主人公が、

妻の遺言状を受け取ることから、展開します。

ひとつは、長崎・平戸の妻の故郷の海で散骨して欲しい、 というもの。

もうひとつは、平戸の郵便局留めになっているもう一通の遺言書を

受けとること。


彼は、妻が全快したら、一緒に旅をしようと手造りしていた

キャンピング・カーで、富山から平戸への旅へでます。

その途中、妻との出会いを回想したり、

さま様な人間模様を抱える人間たちに出会っていく、

俳優で言えば、

ビートたけし、だったり、草なぎ剛だったり、佐藤浩市だったり、

余貴美子だったり、綾瀬はるかだったり、大滝秀治だったり、・・・

そういう物語です。


彼の務める富山の刑務所に、童謡歌手の洋子が慰問にきます。

歌うのは、宮沢賢治 作詞・作曲の「星めぐりの歌」。




こころに染み入るようなその歌声に、彼は感動します。


それきり、洋子は慰問にくることは無くなりますが、

富山刑務所が定期に開催する「矯正展」で偶然彼女に出会った彼は、

「また、慰問に来てください、みんな心待ちにしています」

というようにいうと、

「もう、行きません。

実は、ある人のために歌いに行ったのです。

すみません」

と洋子が告白する。

彼女は、夫である服役者のために慰問にいったのでした。

その夫は、亡くなります。


しばらく後、主人公は、竹田城跡で開かれた雲上コンサートへ、

彼女の歌を聴きに行きます。

この竹田城址の雲上の模様、素晴らしい景観です。

まさに、この世のものとも思えない、くらいに美しい。

この場面は、映画を見てほしいです。

雲海の竹田、ぼくは知りませんでした。

20141128anatehe3

20141128takedaunkai3


そのコンサートのあと、

「もう歌手をやめようと思う」

と話す洋子に、彼は、語ります。

「(愛する人が亡くなったとしても)

時間を止めないでください。

あなたの時間を生きてください」

これが、この映画のキー・メッセージだと思います。

そして主人公は遅まきの結婚を洋子とすることになり

15年を過ごします。




主人公は、遺言を受け取り、読んで、

このような希望があるのなら、何故生前に言ってくれなかったのか、

彼女にとって、自分とはなんだったのか、夫婦とはなんなのか、

という疑問を抱えながら、平戸に向かうことになります。


実は、妻が亡くなってから、彼の時間は止まったままなのです。

平戸について、局留めの2つめの遺言書を受け取り、

開けてみると、

「さようなら」

という言葉だけ。


ここから、彼の心が動き始めるようです。

妻のこころが、通じたのです。


思えば、実直な彼は、洋子との結婚後も、勤めに励む一方で、

妻の故郷を訪れたこともなかったのです。

彼女がどんな街で生まれ、どのように成長したのか。。。


彼女の故郷の、平戸の海の街を歩きます。

平戸の薄香、という漁村なんですが、

名前もなんだか作ったようにぴったりで・・・。





そして、古びた家族写真館の前で佇み、

その飾り窓に、

妻、洋子の少女時代の舞台で歌う姿を発見します。

20141128anatahe2


そして、彼が言います。

「ありがとう」

そして、それが、

「さよなら」

の言葉でもあるのです。


彼女は、主人公を、富山から平戸まで、手造りキャンピング・カーで、

ともに旅をして、

彼女との時間を共有したことを思い出させ、

彼女の故郷の街、そのたたづまいが彼女を育てたことを共有し、

分かり合えるすべてを共有したあと、

もう、これでお別れなのです、

「(あたしが死んだあとも)

時間をとめないで、

あなたの時間を生きてくださいね」

・・・・・

自分を生き返らせてくれた人へのお返しのメッセージだった。



誰しもが、いつかは大切な人との別れを経験しなければ

なりません、

しかし、残されたものは、

残りの人生を、生き抜いていかねばならないのです、

いや、残りの人生、というとらえ方ではなく、

(これでは、前の人生に取らわれたまま、ですので)

新しい人生、

新しい自分の時間を、生きていく。。。





この映画は、オープン・エンドの物語となっているようです。

佐藤浩市演じる男は、洋子の故郷の平戸の漁師だったのですが、

陸に上がった仕事をしたい、という夢をすてきれず、

ある嵐の夜に、遭難にあったことにして、故郷を捨てて逃げるのです。


残された妻子が、余貴美子と綾瀬はるか、ですが、

遭難にあったであろう漁師は、その死亡が比較的たやすく認められ、

その生命保険で、船などの借金を返し、食堂も開いて、

なんとか生活をやりくりしています。

その妻が、散骨をする主人公に、

「娘が結婚する写真」を託して、

「一緒に海に沈めてほしい、

あのひとが見てくれるかもしれないから」、

と言います。


主人公は、この街を紹介してくれた佐藤浩市の言葉から、

彼と彼女が、夫婦であることを、察します。


そして、写真は海に沈めずに、

平戸からの帰り道に彼のいる門司に寄って、

佐藤浩市に会い、

その写真を、渡すのです。

そして、

彼の妻との会話から、主人公自身が得た、

「あなたには あなたの時間が流れている」

というメッセージを語ります。


彼の身を隠して生活している懺悔のような話を聞いたあと、

「刑務所では、受刑者が人を使って外へ情報を流すことを『鳩を飛ばす』と言います。

自分は、今日、鳩になりました」

といって去っていきます。



また、妻の不倫に気づいていながら、

実演販売セールで日本中を旅し続けている、草なぎ剛演じる男性。

彼の、夫婦関係はどうなることなのか。

彼の、元気いっぱいの様子で、働くさまをじっと見つめて、

無言で去っていく、主人公。


佐藤浩市演じる男も、草なぎ剛演じる男も、

今は、夫婦関係に、遭難しているこようなものですが、

世の中、

あそこにも、ここにも、こんな人生で、いっぱいです。


思えば、ふたりとも、時間がとまっている。

ひとりは遭難死を偽装したときから、ひとりは妻の不倫を知ったときから。

時間を止めず、あなたの生を生きよ、

ということは、

その「事実」に、逃げることなく、正面から向き合って、

闘い、乗り越えて、生き抜きなさい、

ということなのかもしれません。


平戸へ向かう途中、同じように妻を亡くしたあと、

キャンピング・カーで旅行をしている、

自称元教師のビートたけし、がうんちくを述べます。

理屈っぽいので、多くの視聴者が無視しているようですが、

それは「旅」と「放浪」の違いについて、

芭蕉は「旅」の巨匠であり、山頭火は「放浪」の巨匠、

旅は目的があり、帰る場所があるものだが、

放浪は、ただのさすらい。。。


もちろん、監督の降旗康男さんは、「放浪」派でしょう。

最後のシーンは、山頭火の、つぎの詩がながれて、

終わります。


「このみちや いくたりゆきし われはけふゆく」  山頭火


われわれの人生は、「旅」なのか、「放浪」なのか。

「旅」だと言い切れるひとは、

しあわせな人、

かもしれません。



(おまけ;日曜インタビュー 降旗康男監督

背中がまっすぐな健さん  )


おまけ 2:




おまけ 3:




おまけ4: これは、ますます蛇足気味になるおまけですが・・・。

       僕が、以前、健さんのことを書いた記事です。

       「あなたへ」も、「あなたに褒められたくて」と同様、

       「お母さんへ」、だったのかなぁ。

      あなたに褒められたくて 高倉健 文化功労賞


(写真は、あちこちのインターネット・サイトからお借りしました)






^O^


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No title

貴兄の解説を読んでこの映画がよくわかりました。睨んだとおり、たいへんなインテリですなあ。小学校、中学校l、高校と勉強ができまくった方ですね。


ぼくも15年ほど腰痛に付き合っていますが、ミオナールという筋肉を柔らかくする内服薬が一番利いています。整形外科でのマッサージはまったく役にたたず、街のマッサージ屋は悪化させるだけでした。

ミオナール

こんにちは。

健さんの映画に共感してくださって、うれしいです。


> ぼくも15年ほど腰痛に付き合っていますが、ミオナールという筋肉を柔らかくする内服薬が一番利いています。整形外科でのマッサージはまったく役にたたず、街のマッサージ屋は悪化させるだけでした。

さっそく「ミオナール」を探して、試してみます。タイでは入手できないかもしれませんが、12月末に日本に戻りますので、手に入るでしょう。
やはり、街のマッサージではだめでしょうね。私のマッサージ師も直せる、とは一切言いません。ただ筋肉をほぐすだけなのでしょうが、それも悪化させるだけとい場合が多いのでしょうか。今は、ただ、痛んでいるところ責めて、自虐的な快感を感じているだけなのか、と思ったりしています。
ご助言、ありがとうございまいした。
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このキューピーさんの絵は奥さんのゴイ作です。
退職後、ロングステイ先を求めてタイにやってきたのが2008年。あせらず、あきず、あきらめず、いつまでも成長していける心で、豊かに生きることを願っています。

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